健康コラム

肩関節疾患について(2)~治療方針~

「関節鏡手術」が可能な代表的疾患

代表的な肩関節疾患と治療方針について説明します

 

肩腱板断裂

肩腱板断裂肩腱板断裂

 

 

 

 

 

腱板断裂とは

肩甲骨と上腕骨をつないでいる腱板という板状の腱が切れてしまったものを言います。
好発年齢は50歳以降です。

原因

転倒して手や肘をついたり、重いものを持ち上げようとしたり、肩を捻ったりなど、外傷を契機として発症する場合が多いようです。
ただ、さしたる外傷がなく発症することもありますので、整形外科にかかっていても、五十肩として扱われている場合も多いようです。
“五十肩”が半年以上治 らないようでしたら専門医を受診したほうが良いでしょう。

症状と治療方針

症状は、夜間痛、動作時痛とくに腕を上げるときや下ろすときに痛みや引っ掛かりを訴えることが多いです。
また、肘を脇から離しての動作がつらく力が入らないのも特徴です。
治療は、腱板が切れていても、時間経過と共に症状が軽快することが結構あり、注射や理学療法などの保存療法の効果がかなり期待できます。
ただし活動性の高い人で、受傷後3ヶ月以上症状が続いている場合は、手術を要する可能性が高くなります。
当院では、充分な保存療法と厳密な診察にて手術の必要性を吟味しています。

手術

手術が必要な場合は、切開せずに小さな創を数箇所つくって行う関節鏡視下手術を、すべての手術の必要な患者さまに対して行っています。
関節鏡視下手術は、正常な組織である三角筋を損傷しないばかりか、診断も修復も正確かつ強固にできるので、直視下手術に比べそのメリットは計り知れません。

術後の生活

元来、術後の痛みの強い疾患ですが、直視下手術に比べて低侵襲な分、術後の痛みがかなり軽減し、実際、入院期間は1週間程度で済みます。
ただし、術後3週間 程度は外転枕という着脱可能な装具をつけます。
術後は個人差はあるものの、約2ヶ月で日常生活復帰、3ヶ月で軽作業、6ヶ月で重労働可能となります 。
完治となるのは術後1年頃です。

肩関節拘縮

肩関節拘縮とは

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五十肩に代表されるような、肩関節の疼痛と関節可動域制限を主な症状とする疾患です。
好発年齢は40~60歳です。
五十肩とは、上記の症状が、明らかな外傷やきっかけがなく徐々に疼痛(特に夜間痛)が出現し、肩関節の動きが制限されてくるものを言います。

治療方針

このような五十肩は、痛みの強い時期は注射療法が、痛みが和らぎ関節可動域制限が主たる症状の時期には理学療法が奏功するため、手術に至ることは殆どあり ません。
ただし、五十肩と同様な症状でも、大きな外傷や骨折などに続発する拘縮(外傷性肩関節拘縮)や、糖尿病に合併した拘縮(糖尿病性肩関節拘縮)の場合は、理学療法だけでは治らないか、かなり時間がかかることが多いので、手術をしたほうが良い場合があります。

関節鏡視下関節包全周切離術手術

手術はすべて関節鏡視下に行います。
5mm程度の創が2~3箇所で、硬く厚くなった関節包と言われる関節の一番内側の靭帯を全周性に切離する方法です(図3)。

手術時間も短時間で、肩関節鏡視下手術の中では比較的容易な手術です(関節鏡視下関節包全周切離術)。

 

 

反復性肩関節脱臼

反復性肩関節脱臼

復性肩関節脱臼とは

スポーツ中の外傷などを契機として肩関節の脱臼が起こり、それが癖になって軽微な外傷でも肩が外れるようになってしまった状態を言います。
スポーツ活動中だけでなく、ひどくなると日常生活や寝がえりでも外れてしまうこともあります。
肩関節(肩甲上腕関節)内の関節上腕靭帯という靭帯が、関節窩という受け皿から剥がれたり伸びたりしてしまって、靭帯として正常に機能しなくなった状態です(図4、5)。
中には関節窩自体が最初の脱臼で骨折を起こしていてそのままになっているケースもあります(図4)。
この古い骨折を伴うタイプは、ラグビー・アメフト・スノボーなどの激しいスポーツで受傷した人に多いようです。

下関節上腕靭帯・関節唇の損傷

治療方針

治療は手術にて壊れた関節窩の骨や靭帯を元に戻す必要があり、完治を望むのであれば手術以外に方法はありません。
リハビリで周囲の筋肉 を強化するなどとよく言われますが、多少の安定感は得られても、外力が加わったときにも外れない肩には決してなりません。ただ、ある程度高齢になると外れにくくなりますが、その後に外れると腱板断裂など新たな損傷を生じたり、将来的には変形性関節症になったりすることがありますので、やはり活動性の高い時期に手術できちんと治しておいたほうが良いでしょう。

手術「関節鏡視下バンカート法」

関節鏡視下バンカート法

●関節鏡視下バンカート法(スーチャーアンカー法)とは
正常な構造物を損傷せずに、壊れた関節包(関節の一番内側の靭帯)や関節窩 の骨を修復する手術法です。
スーチャーアンカーと呼ばれる糸つきの小さなビスを関節窩に打ち込んで、その糸で靭帯や壊れた骨を関節窩に固定する方法です。
さらに、関節内の病態や患者の年齢・性別・スポーツ種目によって補強術式を追加します。
鏡視下法では、患者さんに合わせて微妙に術式を変えることが可能な手術です。手術創は5mm程度のものが3~5箇所できるだけです。

sugioka_099_1従来あるいは現在でも多くの施設で「直視下法(メスで大きく切開して行う手術)」が行われていますが、当院では原則「関節鏡視下」にて手術を行っています。
「直視下法」は術後の再脱臼率は低いのですが(約5%以下)、手術創が大きいという問題のほかに、正常な組織を損傷したり、正常な構造を変えてしまうため、術後の「関節可動域の制限」や「かたさ」がでます。
スポーツ種目によっては、スポーツ復帰率が悪かったり、復帰できても必ずしも充分なパフォーマンスレベルには 至らないという問題が考えられます。

一方、「関節鏡視下手術」は、手術創が目立たなく、正常な組織を損傷しないため、術後の可動域制限が少なくスポーツ復帰率も高いという長所がある反面、術後再脱臼率が高い(20%以上)といわれてきました。

しかし、近年の病態診断学のレベルアップと関節鏡視下手術の技術レベルの向上は目覚しく、実際、国内外で、術者・施設によっては、スポーツ復帰率が高いまま、再脱臼率で直視下法を凌ぐ成績を上げているところも出てきています。

術後の生活

入院期間は数日で、術後早期にデスクワークなら就労・就学が可能です。 ただし、術後は着脱可能で衣服の上からつける装具で3週ほど患肢を固定します。個人差がありますが、術後1~2ヶ月で日常生活には不自由がなくなり、3ヶ月で軽いスポーツ、6ヶ月で大抵のスポーツ復帰が可能となります。ただし、ハイレベルでのスポーツ活動で不自由を感じなくなるまでには、最低でも術後1年程度を要します。

投球障害肩

 

投球障害肩とは

スポーツ中の外傷などを契機として起こる肩関節唇損傷やインターナルインピンジメントと呼ばれる、腱板関節面と後方関節唇の衝突による投球時痛などが代表的です。(図6)

関節唇損傷で有名なSLAP損傷は関節唇の上方部分の損傷で、肩を使う様々な競技で起こり、疼痛及び競技中の不安定感など特有の症状を呈します。(図7)

当院では十分な理学療法にて肩甲骨を含む肩全体のコンディショニングを行った上に症状が残った場合に関節鏡手術を施行しております。

投球障害肩

 

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