脳神経外科

脳神経外科紹介

脳神経外科の扱う領域は脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷、脊椎脊髄疾患から機能神経外科まで多岐にわたります。これらの診断や治療方針についてのご相談は、いつでもお受けいたします。

ニューロモデュレーションの外科

福岡みらい病院での脳神経外科は機能神経外科と共同で「神経の機能を電気や薬剤で調整して疼痛や不随意運動、痙性を治療するニューロモデュレーションの外科」を展開していきます。機能神経外科の一翼としては主に脊髄刺激療法を担います。脊椎術後にも残る頑固な痛み、手足の打撲や骨折のあとに腫れて痛みが改善しない場合などに考慮される治療法です。

※Q and A(質問と答え)形式でご紹介しましょう。

脊髄刺激療法について

(機能神経外科でも記載していますので参考にしてください)

脊髄刺激療法とは何ですか?
ある条件下で発生する治療抵抗性の痛みを緩和させる治療法です。
どのような種類の痛みに有効なのですか?
痛みにはいろんな種類がありますが、からだの感覚を伝える末梢神経や脊髄、あるいは脳みそなどの「神経」が傷ついたり働きがおかしくなって生じる痛みを神経障害性疼痛といいます。脊髄刺激療法はこの痛みの治療に用いられます。
神経障害性疼痛って具体的にはどんなもの?
これもたくさんの種類がありますが、脊髄刺激療法がよく効くといわれているのは ①脊椎手術後疼痛症候群と②複合性局所疼痛症候群の二つです。
どちらも難しい名前で聞いたことがありません。
それぞれを説明していきますが、まずまとめましょう。

『脊髄刺激療法とは脊椎手術後疼痛症候群や複合性局所疼痛症候群などの神経障害性疼痛を緩和する治療法です』

※脊髄刺激は英語でspinal cord stimulationといいますので頭文字をとってSCSともよばれます。以下はこの略語を用います。

新しい脊髄刺激療法のご紹介(感じない脊髄刺激)

脊髄刺激療法は慢性の疼痛を和らげる治療法です。
最初に1967年にヒトでの応用が始まり、以来長年にわたって手足や腰の痛みの治療に用いられてきました。

今までの方法は痛みのある体の場所に脊髄電気によって発生する刺激感が重なるように調整することがとても重要でした。

また、仰向けに寝ているときと座ったり立ったりするときは、電極と脊髄の距離が変わるので、姿勢によって刺激の強さを変える必要があり煩雑に感じる患者さんもいました。
時には、その刺激感が不快で治療ができない場合もあり、長年の悩みの種でありました。

最近、それらを克服しようと新たな脊髄刺激療法が開発され、当院でも使用しているので、ここにご紹介します。

感じる刺激と感じない刺激

従来の刺激感が生じるものはトニック刺激とよばれます。
そして刺激感のない方法にはいくつか名前がついていて、バースト刺激ハイドーズ刺激という2種類が日本では使えます。

当院では従来の感じる刺激と感じない刺激の両方を1週間ほどかけて「おためし」する期間をもうけています。
そして感じない刺激で効果が確かめられたら、一ヶ月ほどあけて脊髄刺激のシステムを埋め込みます。全身麻酔でも局所麻酔でも可能なので話し合いが必要です。

この感じない刺激で行う利点は

  1. 電気刺激による不快感が生じないこと。
  2. 強度の調整がときどきですむこと。
  3. 体位による調整が不要なこと。

などがあげられます。

また従来の感じる刺激になれてしまい、痛みの抑制効果が乏しくなった場合に行うと、再度痛みが抑制される場合もあるため、試してみる価値があります。

当院でも頸椎や腰椎の術後に残存する痛みや、パーキンソン病に伴う腰下肢痛に使用して(個人差はありますが)、ある程度の手応えを感じています。適応疾患については今までの感じる刺激と同じです。

頸椎術後の疼痛に対して良く効いた患者さんのインタビューを紹介しますので、参照ください。

脊椎手術後疼痛症候群とは?

「脊椎手術後疼痛症候群」って首や背中、腰の骨の手術が失敗しておこる痛みなのですか?
必ずしも失敗というわけではありません。術前からあったしびれや痛みが術後も改善なく持続あるいは次第に増悪していくものを総称しています。
再度手術をすればよいのではないですか?
神経への圧迫が残っている場合は再手術で取り除けば改善する場合もあります。しかし圧迫はとれているのに脊髄の色が画像で変化している、あるいは明らかな圧迫は無くなっているのに痛みが持続している場合は追加手術で改善する可能性はとても低くなります。その場合にSCSが考慮されます。

『SCSは脊椎手術後で神経への圧迫がとれているのに残存する、あるいは増悪する痛みに対して用いられます』

実際にSCS療法中の脊椎手術後症候群の患者さんの感想をお聞き下さい。

複合性局所疼痛症候群とは?

複合性局所疼痛症候群ってさらに複雑な名前ですね。
医療関係者でも知らない人は結構多いです。
ひとくちでいうとどんな病気ですか?
手足の損傷後に生じる次第に増悪する痛みといえます。手足の骨折後にでも生じますが、普通は直ってしまう軽度の損傷で生じる場合があります。たとえば手首、足首を捻挫した後や、採血や注射をうけたあとに時間がたってだんだん進行していく痛みで、途中で痛みの部分が赤くはれ上がったりする場合もあります。怪我が軽傷なときには、「その程度で強い痛みが生じるはずはない。続くわけがない。」「仮病だ、嘘をついている」「精神的なものだから精神科にいったら」など誤解されることも多い病気です。進行すると痛みがある部位の皮膚色が変わり、筋肉や骨が細くなることもあります。
どうやって診断してもらったらいいのだろう?
麻酔科、ペインクリニック、整形外科、リハビリテーション科や脳神経内科でも広く認知されていますので、この病気かなって気になったら相談してみてください。
いつ脊髄刺激療法を考えればよいのですか?
きまりはありません。いろんな治療を組み合わせることもよくあります。
といっても一般的には薬物療法や神経ブロック、リハビリでの効果が乏しい場合に紹介されてくる場合が多いです。

SCSが効いた複合性局所疼痛症候群患者さんで、疼痛がどのように変化したかをお聞き下さい。

もう一人、SCSを受けた複合性局所疼痛症候群の患者さんのビデオをご紹介しましょう。

このようにSCSは脊椎手術後疼痛症候群や複合性局所疼痛症候群に対しては有効な治療法です。

その病気であれば100%の効果があるのですか?
この二つの病気には「群」という字がついています。これは集まりなので、いろんな状態や病態が含まれるので効かない場合もあります。
効くか効かないかがどうやってわかるのですか?
いくつかの種類の薬を注射してSCSの効果判定予測をおこなう場合(ドラッグチャレンジテストという)もありますが、より確実なのはSCSの「おためし」を数日間にわたって行うものです。

脊髄刺激のトライアルとは?

「おためし」?
トライアルとよんでいます。局所麻酔のもとで脊髄刺激電極を目的の場所に設置し体外から電線を出し、そこに刺激装置をつないで電気を流します。効果がみられれば別の日に、脊髄電極と刺激装置をともに体内へ本当に埋め込むという方法。無効ならば脊髄電極は抜き取ります。

トライアルの実際(ビデオ)を提示します。

脊髄刺激はほかの病気の痛みにも使われるのですか?
今まで述べた二つの疾患以外にも脳卒中後の手足の痛みパーキンソン病に伴う腰下肢痛にも行っています。効果は個人差がありさまざまですが、つらい痛みに対してはトライアルだけでもしてみることは価値があると思われます。

SCSを受けた患者さんのご家族の感想について示します。

また、日本ではあまり盛んではないのですが、脊髄刺激は身体の血流を増やす作用もあることから、外国では血流の流れが悪くなり酸素が足らなくなっておこる虚血痛にもよく使用されています。狭心症による痛みや手足の動脈硬化による潰瘍や疼痛に対しての治療です。
どのような痛みに脊髄刺激療法が効くのかについて英国疼痛学会がまとめた表がありますので提示します。もしこの中にある病気の痛みで悩んでいる場合はご相談ください。

脊髄刺激療法の適応疾患 (英国疼痛学会の推奨 2009)

よく反応 腰椎術後痛(下肢痛)、頸椎術後痛(上肢痛)
複合性局所疼痛症候群
末梢神経障害痛
末梢血流障害
難治性狭心症
腕神経叢障害(部分外傷・放射線照射後)
時に反応 四肢切断後痛(断端痛、幻肢痛)
腰椎術後痛(軸性腰痛)
開胸術後痛
帯状疱疹後神経痛
脊髄損傷後痛
まれに反応 中枢痛(脳卒中など)
脊髄損傷後痛(後索機能消失)
会陰痛、肛門痛
反応なし 侵害受容痛(虚血を除く)
完全脊髄損傷
引き抜き損傷

脳ドック

今日、脳神経外科が扱う疾患は多岐に渡り、頭部外傷、くも膜下出血・脳梗塞・脳出血を含めた脳卒中、腫瘍性病変、脊髄・脊椎疾患、機能的脳疾患などが挙げられます。これら幅広い疾患に対し、当院では3テスラMRIを用いた「脳ドック」を実施しております。

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