機能神経外科
パーキンソン病、ジストニア、振戦(ふるえ)などの不随意運動疾患や、難治性のいたみなどの機能的脳疾患を治療する脳神経外科の一分野です。薬剤治療、理学療法はもちろん、脳深部刺激療法(DBS)や脊髄刺激療法(SCS)、大脳運動野刺激療法(MCS)、迷走神経刺激療法(VNS)、バクロフェン持続髄注療法(ITB)など電気刺激装置や薬剤ポンプを体内に植込み神経機能を調節する各種バイオニック医療、ボツリヌス毒素(ボトックス,BTX)注射療法などを駆使し、包括的な治療を行います。
診療時間は約15分を目安にしておりますが、病状の変化が大きい患者さんによっては長くかかることがあるため、予約時間が大幅にずれ込んだり順番が前後したりすることもありますのでご了承下さい。
※ 「機能神経外科 初診」の患者さんは、かかりつけの先生からの「紹介状(診療情報提供書)」のご持参をお勧めします。
脳深部刺激療法(DBS)専門外来
DBSに特化した治療環境
DBSは局部麻酔で行なわれ、開頭手術に比べると患者さんの負担が非常に軽い手術です。しかし、頭を固定され、意識がありながら脳の手術を受けるというのは、とても不安でストレスを感じるものです。
当院では外来や病棟、手術室の看護スタッフを始め、リハビリテーションから事務部スタッフに至るまで、定位脳手術を受ける患者さんの快適な入院生活をサポートするために、万全の態勢を整えています。
特にパーキンソン病の患者さんは、リハビリテーション、術前検査、術後のDBS調整・評価、慢性期の薬物の調整などのさまざまな目的で、常に十数名の方が入院されておられます。また退院後は、ご紹介頂いた主治医の先生と連携しながら、ともに治療に関わって参ります。
DBSを検討中の患者さんへ
DBS手術には、安全性と確実性の両立が求められます。短時間に手術を終了できても、電極を植込んだ場所が治療に有効でなければ精神症状など副作用だけが生じ、治療として全く意味がありません。有効な部位に植込んでも脳内出血を起こせば後遺症を残すことがあります。そのため術者には、病気と手術、DBSに対する十分な理解と技能そして経験が必要とされます。またDBSを受ける患者さんも、これらをよく理解した上で手術を受けるか否かを決定して頂く必要があります。治療は医師と患者さんの共同作業です。
※手術を受けた方がよいかどうかのセカンドオピニオンにも応じますのでご相談ください。
DBSをすでに受けた患者さんへ
DBSは器械を植込んで終わりという治療ではなく、むしろ植込んだ後の刺激条件や薬剤の調整が重要です。DBSは薬剤と同様、病気そのものを治す治療ではありません。その症状を緩和し、生活の質をより高めるための治療です。また手術を受けた患者さんは病状の変化に一喜一憂することなく、根気よく、上手に病気と付き合って頂きたいと思います。
パーキンソン病に対するDBS(視床下核刺激療法)
「パーキンソン病ではどんな場合に手術が有効なのか」をご参照ください。
パーキンソン病には運動症状と非運動症状があります。それぞれが病気本来の症状であったり、長期の薬剤使用による結果であったりします。薬剤治療に限界を感じるようになった時、DBSはとても強力な武器になりますが、万能ではありません。DBSで解決できる症状、解決できない症状、かえって悪化する可能性がある症状があります。たくさんある症状のうち、何に一番困っているのかを明確にする必要があります。詳しくは担当医へご相談下さい。
ジストニアに対するDBS(淡蒼球刺激療法)
ジストニアには、自らの意思とは反する筋緊張により「手足が動かしにくい、体が捻れる」などの症状を呈する疾患群で、種々の原因が混在しています。特に全身性の場合、薬剤が全く効かない患者さんが多くいらっしゃいます。DBSは一部の全身性ジストニアに非常に有効ですが、いまだなお、その効果は患者さんによって一定しません。DBSを安全・確実な治療法に完成させるべく、厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服事業に参加し「ジストニア脳アトラスによる淡蒼球内節機能異常の検索と新規ターゲッティング法の確立」研究班(研究代表者)を統括しています。
振戦(ふるえ)に対するDBS(視床刺激療法)
ふるえには数十年も前から視床凝固術が行なわれており、その有効性は確立されておりました。現在は凝固術ではなく、器械を植込むDBSが主流です。凝固術は「破壊」であるため、副作用が生じやすく残りやすいという欠点があります。
一方、DBSは「破壊」を必要とせず、手術後に調整することにより、副作用を生じずにふるえを抑える条件に設定します。
刺激に対する「慣れ現象」を防ぐため、上記(視床下核や淡蒼球)とは異なり、就寝中にはリモコンで刺激を切ることをお勧めしています。