健康コラム

iPS細胞による細胞移植療法・再生医療

細胞移植とは

細胞移植は脳内で失われたドパミン細胞を補う治療です。パーキンソン病が治ってしまうかのような夢の治療と考えられていました。確かに、移植された細胞がガン化することさえなければ、仮にその細胞のドパミンを作る能力が失われても、レビー小体に囲まれた中で生き続けることができなくてもマイナス面はなさそうです。

自分のiPS細胞で作られた細胞であれば、拒絶反応は起きないかもしれません。しかし、発病した人が自分のiPS細胞で治療するには、膨大な時間と莫大な費用がかかり現実には難しいようです。実際は他人のiPS細胞を使う研究に切り替わっています。作られた中から最も相性の良い細胞が選ばれますが、他人由来である限り拒絶反応を免れることはできませんので、免疫抑制剤は一生飲み続ける必要がありそうです。

細胞が移植される場所はドパミンを作る中脳黒質ではなく、実際にドパミンが必要とされる線条体(被殻)です。線条体は比較的大きな構造物なので、その中に3-4箇所(両側ではその倍)に分けて広く植込む必要があります。ということは、脳を合計6-8回も穿刺することになり、手術そのものの脳に対する影響が懸念されます。

パーキンソン病の進行期には、殆どの場合、ドパミン不応性の症状も伴ってきています。細胞移植療法は、原理的にドパミン反応性の症状を改善させますが、ドパミン不応性の症状には無力です。おそらく、薬物療法を始めたばかりの早期であれば、細胞移植療法は有効かもしれませんが、進行期にはそのメリットはほとんどないのではないでしょうか。

ドパミンの補充が目的であれば、レボドパなど薬物療法が最も安全で確実であることは言うまでもありません。もしもウェアリングオフ(薬効時間の短縮)が生じてきたら、LCIGやDBSが安全で確実な治療といえるでしょう。脳深部刺激法と凝固手術、細胞異色療法の比較