中高齢者の膝疾患に対する治療の特徴
日本人の膝の形状や生活様式に適した人工膝関節置換術を実施
膝が悪い日本人の多くは膝がO脚になっています。
また、日本の生活様式では、膝を深く曲げる事が必要な場合が多くなります。
し たがいまして、患者さんの一人ひとりの膝の形状をしっかりと把握し、その膝の状態に最も適し、膝をより深く曲げることができる治療を行う事が重要です。そ の為に、立位でのレントゲン像やMRIを撮影し、膝の不安定性などを含めて詳細に診察を行い、綿密な治療計画をたてて治療を行っています。
治療では、関節鏡、各種骨切り術および人工膝関節置換術とあらゆる手術を行っています。
特に人工膝関節置換術は、日本人の膝の形状に適し深屈曲が可能なシステムを使用し、膝の不安定性を確実に改善し安全に深屈曲ができる手術手技を用いて手術 を行っています。欧米人用のシステムや、欧米人のための手術手技では、日本人では術後の経過が悪くなる可能性があります。
日本人の膝の形状にあった手術手技などに関しては、これまで多くの研究を行い日本国内外の学会でも発表してきています。これらの情報を活用し、豊富な経験を基に一人ひとりの患者さんの膝に最適な手術を提供しています。
治療の実際(基本的な流れ)
(1) 変形性膝関節症の治療は、まず軟骨の状態を確認するところから始まります。
(2) 立位にて膝のレントゲン像を撮影し、軟骨の状態によってGrade1~4に分類します。(下図参照)
Grade1 | Grade2 | Grade3 | Grade4 |
軽度の関節の老化 関節の狭小化(-) |
やや進行した老化 関節の狭小化(+) 軟骨は1/2以上残存 |
かなり進行した老化 関節の狭小化(+) 軟骨は1/2以上減少 |
進行した老化 関節は閉鎖 軟骨は完全に消失 |
(3)その後、それぞれに適した治療法に移行します。
保存的治療
基 本的に全ての膝はまず保存的に治療します。しかし、主に軟骨が残っているグレード1と2に対する治療となります。O脚を改善するための足底板を装着した り、ヒアルロン酸注入を定期的に行います。軟骨のすり減りを予防する事が最大の目的になりますが、治療により、疼痛が減少し、膝の機能も回復してきます。
関節鏡視下手術
グレード1~4までの膝で行いますが、半月板損傷、関節内遊離体や結晶沈着性関節炎など、膝関節内で部分的に損傷した箇所を治療するのに、非常に有効な手術です。
関節鏡を用いるため、手術の創は1cm弱の創が数か所しかなくほとんど目立ちません。
入院も数日でよく、職場復帰も早期に可能です。
当科では関節鏡の画像を全てDVDに録画し、希望される患者さんにはDVDを差し上げています。
(イメージ: 沈着した石灰分を切除しているところ)
骨切り術
主に高位脛骨骨切り術を行います。この手術はグレード2,3,4の膝が対象になります。
O脚を改善し、体重が膝の外側にかかるようになる手術で、内側のすり減った軟骨の再生を促す効果があります。比較的若い患者さんにお勧めする手術です。約1ヶ月の入院が必要です。
この手術を行う場合は、関節鏡も同時に行います。
術前 | 術中 | 術後 |
人工膝関節置換術
グレード3および4の膝の破壊が進行した膝が対象になります。O脚が改善され、膝の痛みが劇的に解消します。
膝屈曲は通常130度以上が可能ですが、正座は出来てもお勧めしません。
現在は3~4週間の入院で、十分に歩くことが出来、自信がついたら退院になります。この手術のポイントは、膝の不安定性を確実に改善することと、安全に膝を深く曲げるために膝関節の後方の処置を的確に行うことです。
当科では日本人の膝の形状に適し深屈曲が可能なシステムを使用し、O脚を改善し確実に膝の不安定性を改善する手術手技で手術を行っています。
(イメージ: 人工関節の軟骨の役目をするポリエチレンにかかる力を解析しているところ)
透視画像を用いた人工膝関節の3次元的動態解析
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