健康コラム

膝関節前十字靱帯(ACL)の再建術(1) ~治療方針~

膝関節前十字靱帯(ACL)の役目とは?

「ACL(エーシーエル:英語のAnterior Cruciate Ligamentの頭文字)」は、膝関節のほぼ中心にあって、大腿骨(だいたいこつ:ふとももの骨)に対して、脛骨(けいこつ:すねの骨)が、前にずれないように押さえています。
また、膝にひねりが加わった時にも、膝がずれないように支える役目があります。

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膝関節前十字靱帯(ACL)損傷とは

Basketball膝関節前十字靱帯(ACL)が切れる損傷は「急な方向転換」や「ジャンプと着地」を繰り返す競技で多発する傾向があります。
最も多いのはバスケットボール、サッカーなどです。
膝関節前十字靱帯(ACL)が切れると、急な方向転換やジャンプの着地の時に膝がガクッとずれる、いわゆる「膝くずれ」が起き、膝が頼りない感じになります。
また、膝関節の不安定性が原因で、軟骨や半月板がすり減りやすく「変形性膝関節症」の症状がでやすい傾向になります。

 

膝関節前十字靱帯(ACL)損傷の治療方針

膝関節前十字靱帯(ACL)が切れた直後の治療方針

初めて膝関節前十字靱帯(ACL)が切れた場合には、「靱帯損傷用のサポーター(専用のもの)」を使います。
最初の1~2週間、そのサポーターで関節を保護しながら生活していただき、痛みがあれば松葉杖を使ってもらいます。通常2~4週間すると、痛みがおさまり日常生活に戻れます。
※スポーツ復帰の必要がない人は、ひとまずここで終了です

日常生活復帰後の治療方針

その後は、治療中に落ちた筋力を回復するトレーニング(保存的治療)を行います。
外来通院でしばらく経過を観察しますが、この間、不安定感や疼痛などがある場合は、すでに軟骨や半月板を損傷している可能性があり、結果的に「変形性膝関節症」になるおそれがあります。
その可能性が強いと判断した場合は、この時点で手術をお勧めすることもあります。

なお、スポーツをしている人がそのままスポーツに復帰すると、靱帯が失われている影響でまた「膝くずれ」を起こすことがあります。何度も「膝くずれ」を繰り返していると、必然的に半月板や軟骨が傷み、膝に痛みや腫れが出やすくなります。
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特に競技レベルのスポーツに復帰を希望する人はまず「手術」で靱帯を治してからの復帰が安全な方法だと思われます(手術的治療)。

ちなみに損傷が「靱帯だけ」の時点で、手術的治療をした人のスポーツ復帰率は約85%ですが、靭帯だけでなく「半月板や関節軟骨」まで傷めた状態で手術的治療をした場合には、復帰率が約65%まで低下するといわれています。

 

 

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