健康コラム

股関節の疾患「大腿骨頭壊死について(3) ~治療方法~」

当院の大腿骨頭壊死の治療方針

残念ながら現在のところ壊死して潰れた骨頭を元通りに治す治療法はありません。

壊死部が極めて小さい場合や体重がかからない場所にある場合は手術をせずに経過観察を行いますが、体重がかかる部分にある場合は大腿骨頭の圧潰変形をきたす可能性が高く「手術的治療」が必要となります。

手術的治療は大きく分けて「骨切り術」と「人工関節置換術」の2通りありますが、どちらも利点と欠点があります。
当院では壊死の病型・病期と患者さんの年齢、社会的背景を考えに入れて治療方針を決定します。

当院の大腿骨頭壊死の手術方法

骨切り術tre_img07

骨切り術は壊死を免れた健常な関節面を荷重部(体重がかかる部分)に移動させて股関節機能を回復させる手術です。
壊死を免れた部分がどの部分にどの程度残っているかによって骨切り術の方法を選択します。
大腿骨頭壊死に対して行われる骨切り術としては「前方回転骨切り術」「後方回転骨切り術」「内反骨切り術」があります。

骨切り術を行い荷重部から移動した壊死部は健常な骨に置き換わるとも言われていります。
また骨切り術は自分の骨を利用して行う手術であるため若い年齢で行っても一生関節機能を保つことができる可能性があります。
将来的に人工関節にも移行可能です。
リハビリ期間が長期必要であることや関節の動きが多少悪くなる可能性はありますが、若年者に対しては極めて有効な手術方法と言えます。工関節という治療カードを後々まで残しておくことに大きな意味があると言えるでしょう。

人工関節置換術

一方、人工関節は壊死した骨頭を除去して、股関節に人工の関節を埋め込む手術です。
人工関節術には大きく二通りあります。
一つは「人工骨頭置換術」、もう一つは「人工股関節全置換術」です。
※当院では、患者様の状態に応じて二つの手術を選択しております。

人工関節は安定して痛みが取れ、関節の動きが確保され、入院リハビリ期間も短くてすむ大変優れた治療法です。
手術したその週から歩行訓練を開始できるため高齢者などでは極めて有効な手術です。
しかし欠点もあります。
徐々にゆるみやすり減りが出現するために15年から20年程度で何らかの入れ換え術の必要性が生じる可能性があることや、感染に弱いことなどが挙げられます。また、特定の下肢の姿位をすると股関節が脱臼する可能性があることも欠点の一つです。
人工関節術後に様々な問題が生じた場合入れ替え術を行うことになりますが、入れ換え術は何度も行うことができません。このため50歳代以前の比較的若い症例では、多少条件が悪くてもできる限り骨切り術を検討する必要性が出てくるのです。

人工骨頭置換術

臼蓋側の置換は行わず「壊死した骨頭のみ」を置換する方法です。tre_img12

より簡便な方法と言えますが、術後も愁訴が残る症例が存在すると言われており、当院では基本的に「人工股関節全置換術」をおすすめしております。

人工股関節全置換術

「全置換術」とは、壊死した骨頭と臼蓋側も人工物に置換する方法です。
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変形性股関節症、大腿骨頭壊死、関節リウマチなどの疾患で股関節が著しく変形・破壊され、痛みと動きが悪くなり他の方法で改善が期待されない場合に検討します。
手術の方法は、変形・破壊を来した大腿骨頭を切除し、骨盤側に半球状のカップを設置してその内部に特殊な加工を施された球形の凹みがあるポリエチレンをはめ込みます。

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大腿骨側では棒状のステムと言われるものを骨の中に挿入してその先端に丸いボールをかぶせます。このボールが骨頭の役となり、ポリエチレンの凹みの中に入って股関節の働きをします。

手術は通常1時間程度です。術中に適切な人工股関節の設置が行えたかどうかの評価を何度も行います。

術後、痛みはなくなり、股関節の動きも改善されます。

特殊な場合を除いて、術後翌日から歩行訓練が開始できます。
高齢者などでは、ベッド上の安静期間が長いと筋力の低下や体のバランスを保つ能力に支障を来して回復までに長期間を要することがあります。よって高齢者では人工股関節全置換術が有利と考えられます。

当院では、術翌日より積極的にリハビリを行い、歩行機能の回復に応じて早期の退院を許可しております。

痛みや動きに速効性がある人工関節ですが、欠点がないわけではありません。
生体に大きな異物を入れることによる「感染や摩耗のため使用年数に限りがある」こと、「特定の肢位(強く曲げて内側にひねる)で脱臼すること」などが欠点として挙げられます。

人工関節の利点と欠点をよく理解したうえで治療方針を決定することが大切です。

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