健康コラム

ジストニアの治療▶動画

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ジストニアの治療には以下の方法があります

1) 薬物治療(経口薬)

ジストニアに対する根治的治療はまだ確立されてないため、症状に対する治療(対症療法)がほとんどです。パーキンソン病と異なり、有効性の確実な薬剤に乏しいため、副作用に注意しながら試行錯誤されることがあります。

抗コリン剤(アーテン、パーキン、アキネトンなど)

好んで試される薬剤です。ミオクローヌス様の速い運動成分を主体とするジストニアなど有効例は限られています。副作用として、70歳以上の高齢者では物忘れなどの認知機能低下が必発です。また緑内障のある方では禁忌、前立腺肥大では尿が出にくくなり、注意が必要です。

抗精神病薬(グラマリールなど)

特発性ジスキネジア及びパーキンソニズムに伴うジスキネジアに対して適応があります。

レボドパ(メネシット、マドパー、ネオドパゾール、イーシードパール、ネオドパストンなど)

瀬川病など一部のジストニアでは非常に有効です。

末梢性筋弛緩薬(ミオナール、テルネリン、芍薬甘草湯など)

筋肉の緊張に伴う痛みには有効ですが、ジストニアそのものには効きません。

抗不安薬(デパス、セルシンなど)

症状が激しく、精神的ストレスでパニックになりがちな人に用います。

抗うつ薬

斜頚や書痙は古くから「心の病気」と決めつけられることが多く、現在でも多用される傾向があります。しかし、認知行動療法や自律訓練法など心療内科的アプローチを伴わない抗うつ薬は、ほぼ無意味と思われます。続発性ジストニアの場合、その原因を取り除けば完治するものもあります。例えば、薬剤の副作用によるものの中に、原因薬剤を中止することにより改善するものがあります。しかし注意しなければならないのは、原因薬剤を中止して改善しない例も多いことです。

2) ボツリヌス毒素療法(筋肉内注射)

特定の筋肉の収縮を押さえる目的でボツリヌス毒素を注射します。一度に使用できる薬剤量は限りがありますので、狭い範囲の局所性ジストニアには有効です。確実にねらった筋肉内に薬剤を投与しなければ効果が一定しないため、深部の筋など触診で分かりにくい場合は針筋電計(筋電図)や超音波画像を使いながら注射します。パーキンソン病に見られる「開眼失行」や「眼瞼けいれん」にも有効です。

【ボツリヌス毒素療法症例】
6年前からペンを持つ指に力が入り小さい字が書けなくなり、最近では趣味のギター演奏でもピックを持てなくなった。薬物療法は効果なく、眠気のために中止。普通にペンを持つと、人差し指・親指が勝手に曲がり、手首まで曲がってくる。ペン先を紙面に置くこともできず、ペンを手のひらで握りしめ、腕全体で書いている。箸での食事、マウスのクリック操作もできなくなった。親指・人差し指・中指を動かす筋(右腕)にボツリヌス毒素を注射すると、1週間目から力むことがなくなり、楽に字が書け、マウス操作やギター演奏もできるようになった。
(患者さんご本人の同意を得て撮影・掲載しています)

●すべての患者さんに同様の結果が得られるわけではありません。症状の改善には個人差があります。
●治療には一定のリスクが伴います。治療前には担当医師からの(リスクを含めた)説明をお受けいただき、十分にご検討いただきますようお願いいたします。

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3) 外科治療

外科治療には①定位的脳凝固術と②脳深部刺激療法があります。どちらも定位脳手術という特殊な手術を行いますが、脳のどの部分を手術するかは症状によって微妙に異なるため経験と技術を要します。通常の薬物治療に比べれば格段に有効ですが、症状が完全に消失するわけではありません。改善率10~95%と、効果の個人差が大きため、効果の予測は困難です。手術にはまれに脳出血などの合併症を起こすこともありますので、十分に検討する必要があります。

視床凝固術

書痙や職業性ジストニアなど、症状が片方の手に限局する場合に有効です。約70度の熱で脳の深部(視床)を温め凝固します。DBSのように体内に器械を入れる必要はありません。

【症例】 50代 女性 右利き

生来書くことが好きだった。20歳で百貨店に就職し、5枚複写の伝票に力を入れて書きこむ過重な作業が続いた。21歳から右手に力が入り字が書きにくくなり、26歳で退職し結婚。32歳で百貨店に再就職したが、やはり手書きの業務に悩み、50歳で退職した。箸の操作など、書字以外の日常生活動作は全く正常。書字では右前腕全体に力が入り痛くなっていた。術後は無駄な力が入らず楽に書けるようになった。
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●すべての患者さんに同様の結果が得られるわけではありません。症状の改善には個人差があります。
●治療には一定のリスクが伴います。治療前には担当医師からの(リスクを含めた)説明をお受けいただき、十分にご検討いただきますようお願いいたします。

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視床刺激療法(視床DBS)

視床凝固術と異なり、小さな器械を植え込み弱い電流で刺激する方法です。脳を凝固しないので、副作用の発生率はとても少なく、両側同時の手術も可能で、自分で強さを調整しながら使います。

【症例】 40代 男性 右利き

元来書字は苦手だった。38歳の頃から書字で右腕全体に力が入るようになり、字が書きにくくなった。書き始めるとすぐに右腕が痛くなるため、2文字ずつ休みながら書かざるを得なかった。術後は1行ずつ楽に書けるようになり痛みもない。
(患者さんご本人の同意を得て撮影・掲載しています)

 

●すべての患者さんに同様の結果が得られるわけではありません。症状の改善には個人差があります。
●治療には一定のリスクが伴います。治療前には担当医師からの(リスクを含めた)説明をお受けいただき、十分にご検討いただきますようお願いいたします。

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淡蒼球刺激療法(または淡蒼球凝固術)

全身性や分節性など症状が広範囲に渡る場合や、局所性でも不随意運動を伴う場合に有効です。

DBS(脳深部刺激療法)

DBSの効果発現は、姿勢・肢位異常などで週~月単位の時間がかかり、ふるえなどの速い運動成分には早期(1-2日)に発現する傾向があります。

 

●DBS(脳深部刺激療法)についての詳しい説明はこちら ▶DBS(脳深部刺激療法)の説明

●ジストニアに対するDBSの効果についての説明はこちら ▶ジストニアに対するDBSの効果

●ジストニア治療の前後の状態はこちら ▶ジストニア治療の動画