健康コラム

前方進入法による人工股関節置換術について(1) ~前方進入法とは~ ▶ 動画あり

 従来の人工股関節置換術 (THA: total hip arthroplasty)について

sugioka_125_1「人工股関節置換術(THA: total hip arthroplasty)」は、摩耗して傷んだ部分を削り、人工の受け皿を設置、新しい大腿骨頭に置換することで痛みを取り除き股関節の機能を回復する手術のことです。

この手術は、主に末期の変形性股関節症の患者さんに適応します。

従来の人工股関節置換術は、約15〜20cm程度皮膚を切開し、中の腱や筋肉を切って人工股関節置換術を行った後にその組織を修復する方法が主流でした。

しかしこの手術法では「筋力の低下」や「機能回復までに時間を要する」ことが難点と言われてきました。

 

 

最小侵襲人工股関節置換術 (MIS: minimally invasive surgery)について

1U1V2347そこで昨今、従来の手術法の難点をカバーする「腱や筋肉を温存できる手術方法」すなわち「最小侵襲人工股関節置換術 (MIS: minimally invasive surgery)」が広がりつつあります。

当院では、腱や筋肉を温存できる「最小侵襲人工股関節置換術」として「前方進入法(DAA; direct anterior approach)」による人工股関節置換術を行っております。

前方進入法は、股関節前面を約6cm~10cm程度切開し、腱や筋肉を切らない「筋・腱温存型」の最小侵襲人工股関節置換術(MIS: minimally invasive surgery)であり、主に以下の利点が報告されています。

  • 手術後股関節機能の早期回復が見込まれ、入院期間の短縮が可能です。当院での入院期間は、片側例では7日~10日、両側例では10日~14日程度を基本としておりますが、相談して頂くことにより、ご希望の期間に調整させて頂きます。
  • 人工関節術後の欠点である脱臼の予防にも有利であり、当院では、術後の姿勢、活動の制限は一切行っておりません。これにより、日常生活はもとより、スポーツ復帰にも有利とされています。
  • 仰向けでの手術が可能であるため、状況に応じては両側股関節同時の人工股関節置換術も可能となっております。

できるだけ早く社会復帰して頂き、一日でも早く普段の生活に戻れる事を目指せる手術法のひとつと考えます。筋肉や腱を切り離さないことで、傷が小さいだけでなく早期の機能回復が報告されています。

前方進入法による人工股関節置換術後経過の例(片側例)

●術翌日    歩行器歩行開始

●2日目    杖歩行開始、階段昇降練習

●3日目    シャワー許可、靴下はき練習

●7日目    創チェック後、退院可能

●退院時    300m杖歩行可能 階段昇降自立

●退院後    自動車運転可

●術後3週   デスクワーク可

●術後1~2ヶ月   軽作業可

●術後3ヶ月  重労働、スポーツ活動許可

術後経過の例(動画)

※本動画は、患者さんご本人の同意を得た上で掲載しております。

79歳 男性(片側例)
前方進入法による人工股関節置換術の術後(術後2日目と1週間目)の動画です

術後2日目 階段昇降術後2日目 階段昇降 術後2日目 あぐら術後2日目 あぐら 術後7日目 歩行術後1週間目 歩行

●すべての患者さんに同様の結果が得られるわけではありません。症状の改善には個人差があります。

 

56歳 女性(両側例)
前方進入法による人工股関節置換術の術後(術後2日目、10日目)の動画です

術後2日目 歩行 術後10日目 歩行
術後2日目 歩行 術後10日目 歩行

●すべての患者さんに同様の結果が得られるわけではありません。症状の改善には個人差があります。

 

72歳 女性(片側例)
前方進入法による人工股関節置換術の術前・術後の動画です

▼術前の動画です

▼前方進入法による人工股関節置換術の術後1週間の動画です

●すべての患者さんに同様の結果が得られるわけではありません。症状の改善には個人差があります。

 

68際 女性(両側例)
前方進入法による人工股関節置換術の術前・術後の動画です

▼術前の動画です

▼前方進入法による人工股関節置換術の術後の動画です

●すべての患者さんに同様の結果が得られるわけではありません。症状の改善には個人差があります。

 

62歳 男性 右変形性股関節症
前方進入法による人工股関節全置換術の術後の動画です

右変形性股関節症に対して、前方進入法による人工股関節全置換術を受けられ、術後3か月以降から運動開始、もともとされていた軟式テニスに復帰できるようになりました。

▼術後の動画です

●すべての患者さんに同様の結果が得られるわけではありません。症状の改善には個人差があります。