健康コラム

当院における股関節手術について

当院で行なう股関節手術について

当院では下記にあるような様々な手術を行っております。
それぞれの手術の特徴を把握し、様々な患者さんに最適な方法をお勧めします。
また、手術を行うに当たってはできるだけ丁寧にご説明ができるよう心を配っております。

骨切り術 人工関節 その他
  • 前方回転骨切り術
  • 後方回転骨切り術
  • 外反骨切り術
  • 内反骨切り術
  • 棚形成術
  • キアリー骨盤骨切り術
  • 関節固定術
  • 筋解離術
  • 骨折の手術

自己血輸血について

medical_yuketsu当院では出血を少なくするよう丁寧な止血を心がけておりますが、手術によっては大きな出血が起きる場合もあります。

それに備え、当院では大きな出血の可能性がある手術では、術前に「自己血貯血」を行っております。
「自己血貯血」とは、手術前に自分用に献血を行うことで、「自己血輸血」とは、その血液を術後に返血することです。
貯血を行っても、確実に他家血(日赤血液センターの血液)を避けることができるとは言えませんが、その可能性は極めて少なくなります。

※低体重、貧血など患者さんの状態によっては、自己血の採取が困難な場合もあります。

麻酔について

人工股関節の手術は、腰からの麻酔と全身麻酔を併用して行います。sugioka_096_1

腰からの麻酔の際に通常は細いチューブを留置します。
術後にそのチューブから痛み止めを持続的に流すと術後の痛みがかなり軽減されます。

 

手術に関係したリスクについて

深部静脈血栓症

最近、エコノミークラス症候群として有名な病気です。
手術や長期臥床などを契機に、血管内に血液の固まり(血栓)が付着し徐々に大きくなる病気です。
下肢の人工関節の手術では何の対策も講じずに手術を行うと、3割以上のケースで下肢に血栓が生じるとも言われています。
血栓は下腿後面のヒラメ筋内に初発すると言われ、希に血栓が大きくなり何らかのきっかけで血管内から剥がれ肺に到達することがあります。
肺の大きな血管を閉塞すると肺塞栓症やそれに引き続く肺梗塞を引き起こし生命の危険を伴う事態に発展します。
当院ではこれらの合併症を回避すべく、様々な対策を講じております。
弾力ストッキングやフットポンプ、抗凝固療法などを駆使してその対策を行っております。

出血

大量出血をすることは極めて希ですが、その可能性はあります。
出血のリスクの高い手術では原則的に自己血の採取を行っております。
日赤の血液(他家血)を使用する方法もありますが感染症の問題や拒絶反応の可能性も指摘されており、緊急時を除いて使用しないよう心がけております。
※患者さんの状態によっては、自己血の採取ができない場合もあります。

感染

sugioka_102_1空気中には埃と一緒に細菌が舞っています。
手術の際に皮膚は消毒いたしますが、毛穴の中までの消毒はできません。
感染を起こさないよう抗生剤の投与や術中の洗浄などを十分に行いますが、100%感染を回避することは困難です。
特に人工関節は、人工物でできており血流がないため、細菌が付着するとその表面で増殖しやすいと言われています。
ひとたび人工関節に細菌が付着すると、抗生剤を使用してもなかなか鎮圧することが困難になります。
よって感染に対しては「予防」が一番大切です。

当院では、空気フィルターのついた「人工関節用のクリーンルーム」を設置したり、手術を行う際は、特別なヘルメットをかぶるなどの配慮しており、感染の可能性を最低限に抑える努力をしています。

また人工関節では術後も最低限の清潔には気をつけて頂く必要があります。
虫歯をそのままにしておいたり化膿創を放置したりすると、細菌が血流に乗って人工関節まで到達する可能性があります。
人の体は細菌感染に抵抗するための免疫が備わっていますが、外傷や虫歯などはできるだけ早く病院に行って処置をしてもらいましょう。

脱臼

脱臼した人工股関節

人工股関節の術後に股関節が抜けることがあります。
これを脱臼といいます。
絶対に抜けない人工関節はありません。
しかし抜けにくくするための工夫はいくつかあります。
その一つはアプローチ(進入法)であり、当院では股関節前方から股関節にアプローチし、股関節周囲の筋肉、腱を温存できる前方進入法にて行なっています。また、術中に股関節の安定性について、使用するインプラントの特徴を踏まえて検討し、当院では術中に股関節の安定性について十分な検討を行い、より抜けにくい人工股関節の設置を心がけております。
※骨切り術では脱臼の問題はありません。

脚長差

股関節の手術を行った後に下肢の長さが変化することがあります。
当院では脚長をできるだけそろえるよう配慮しておりますが、安定な股関節を作るためにどうしても脚長差が生じることがあります。
術後に脚長差が生じた場合は靴の中に入れる底敷(補高)で対処いたします。補高には保険が適応されます。

関節の動き

当院で行なっている前方進入法では、基本的には姿勢の制限は設けておりませんが、もともとの変形の程度によっては術前よりも関節の動きが悪くなることがあったり、術後に動きを制限する場合があります。
術前に相談していただき、十分理解していただく必要があります。

人工股関節の摩耗・破損

ゆるみが生じた人工股関節

人工股関節では長期的にポリエチレンの摩耗や人工関節本体のゆるみが生じてくる可能性があります。
最近の人工股関節ではこれらの問題を軽減するための工夫がなされていますが、解決したわけではありません。
このような問題があるため人工関節には耐用年数があるのです。
一度ゆるんだ人工関節が自然と元の状態に戻ることはありません。
変化の速度には個人差がありますが、徐々に悪化の方向に向かいます。

人工関節の周囲の骨や軟部の条件が悪くなる前に再置換術を行う必要があります。
よって人工関節を受けた患者さんは例え調子が良くても、定期的な診察・レントゲン検査を受けていただくことをすすめております。

手術のきず跡

手術を行う際に皮膚の切開を行います。体質によって手術創がケロイド状になる方もおられます。
当院ではできる限り丁寧に縫合するように心がけております。
手術によっては埋没縫合を行って傷を目立たなくする努力をしております。

金属アレルギー

当院で使用している人工股関節はチタン、セラミック、ポリエチレン、ハイドロキシアパタイトでできています。
これらの物質にアレルギー反応がある場合、人工股関節のゆるみが早期に発生する可能性があります。
これまでにネックレス、イヤリング、時計などの金属(特にチタン)で皮膚炎を起こしたことがある方は、必ず主治医にお知らせください。